お芝居感想文2

熱血!飛龍小学校★パワード

ピスタチオ系の役者さんに、ここではじめてナマでふれました。
ちなみに私が観たのは、ピスタチオ解散後のバージョン。再々演、だったのかな?マリを演じていたのがキャラメルの女優さんだったので、まず絶対にピスタチオではない。あと、これの前に「JAM」を観て、それで「西田シャトナーのシナリオをもっと観たい」と思ってチケットを取った記憶もある。うん、間違いない。はず。

やーすげぇ!というのが第一。
事前にJAMを観て、こんなの(パワーマイム)ほんとにやれる人いるの?と思ってたんですが、…いたからああいう手法が成立したんだな…と遠い目になりました。
とにかくパワフル。

筋書きは…うーん…子供社会とか友情とか、大人になることへのおそれとか、ほのかな恋心とか、そういうものがこれでもか!と詰め込まれた贅沢な成長物語、かな。

強烈なキャラクターが毎回出てくるのがシャトナーさんのシナリオの特色だと思うんですが、これもそう。
次から次へと、「あんたピンでもやってけるよ」という強烈な個性のキャラが出てきます。

で、何がすごいって、それでもやっぱり一番かっこいいのは、ちゃんとヒーローなわけですよ。

お前人間かよ的スーパーヒーローっぷりも、みっともないところも格好悪いところも、友情を大事にしまくって必死になるところも、何もかもが完璧。…なのにそれがちっともイヤミじゃない。

基本的に私はシナリオブックの類に興味がなくて(あれ単品で読んでもまったく面白くないからな…)五年通ったキャラメルの、一番泣いたTRUTHですらシナリオを買わなかったんですが、シャトナーさんのシナリオだけは、手に入る分は買いました。…と言っても、これと、Believeだけなんですけど。あ、あとカルメンはパンフにシナリオが入ってました。二度の転居にも負けず、全部持ち歩いています。

エイト!

ランニングシアターダッシュ。客演に平野くんじさんが来ていたり、何かと豪華だったような印象が…ダッシュのお芝居はあまり観ていないのですが、劇団問わずに好きなお芝居を三本、と言われたら、これは必ず入ります。

強豪校にエースを引き抜かれてガタガタになったボート部。そこへ、そのエースの弟が入学してくるという噂が飛び込んでくる。あのエースの弟なら、きっと!と勢い込んで勧誘に出向く部員たちだったが、そこにいたのは兄とは何もかもが正反対の弟で…
という感じではじまり、笑いあり涙ありの波乱万丈な高校の部活動を活写、ラストには兄の率いる強豪ボート部との対戦までつくという、青春モノの王道ど真ん中を突っ走るお話。

主人公のいる弱小ボート部の面々も個性的なんですが、登場場面も台詞も少ない主人公の兄のインパクトが強烈。
多分、兄をほとんど出さず、弟にその姿を語らせたからだと思います。ヘタに生を出しちゃうと、「なんだ、意外とつまんないヤツじゃないか」ってなってたと思います。

夕日の中に立つ兄を「美しい」なんて語ってしまう弟が、その兄に勝ちたいと思うまでになる、その成長過程もよかった。

サイドストーリーがあるならば読みたい!と、いまだに思っています。兄在籍時の話とか。兄弟その後とか。

REBIRTH

何年前だかに解散してしまった、ランニングシアターダッシュのお芝居。
両親の学生時代にタイムスリップしてしまった女子高生が主人公で、舞台は大学の演劇サークル。
ロミオとジュリエットを下敷きに、…まあ要するにウェストサイドストーリーと同じようなノリなんですが、ひとつ違うのが、過去世界で、父が娘に恋をしてしまう、というところ。

こう書くとかなりギリギリな設定に見えるんですが、実際彼らの接触はほとんどありません。物語のほとんどを、ヒロインは男として過ごすからです。
何より、ナマの言葉ではなく、「ロミオとジュリエット」というお芝居の台詞で彼らに恋を語らせたのが良かった。それも、ヒロインがロミオを、ヒーローがジュリエットを演じる、と言う形で!
お芝居の台詞をとおしてしか恋心を伝え合えないふたり。(このふたりの出会いのシーンもまた素敵)

ま、オチは当然あるべき姿に…ということでヒロインは身を引きます。…うー、矛盾が生じるってわかってても、くっついてほしかった、なあ…

Believe

五人芝居、ビリーブ。
戦国時代と言えば、なおなじみの面子が、落雷によるタイムスリップで突如領内に出現した民家から「チャート式日本史」を発見し…

……というのが主な筋書きなんですが、もうほんとにこの保村大和が格好良くて男前で!!
脇を固める役者さんたちも、一癖も二癖もある、ものすごく魅力的な人ばかり。前説でシャトナーさんが「男前五人芝居」と言っていましたが、まさにそのとおり。

ん、が!
でもやっぱり、そんな中でも、保村さんの男前っぷりは尋常じゃありませんでした。
あのラストは本当に良かった。

超一人芝居Believe

五人の段階ですでにいっぱいいっぱいだったのに、一体どうやって一人で…?
と、不安でいっぱいになりながら劇場の椅子で開演を待っていた記憶があります。

初日だったこともあり、保村さんも最初はなんだか緊張気味…と言うか、まず、この形式に観客がついて来られるのか?という不安もあったんじゃないかと思います。
何せ、超一人芝居第一弾だったしなあ。

フタを開けてみると、五人芝居バージョンとはまったく違った男前がずらり、でした。一人だろうが何だろうが関係なし。
上様はやっぱり上様なんだ、ということをかみ締めた一本でした。

超一人芝居カルメン

西田シャトナー脚本、保村大和主演、…て言うか一人芝居。
小さなステージの中央にぽつんと樽があり、天井から長い長い鎖が垂れている。これが、舞台装置の全て。
ホセがカルメンのために罪を犯すごとに、天井から垂れ下がった鎖がホセの身体を縛り付けていく。
そのほかには、派手な照明も音楽もなかったと記憶している。

よく知った物語をどうやって見せるのか、と好奇心半分で出かけていき、「そう来たか!」と唸らされまくった。

バスク訛りだ、と言って関西弁で話すホセの愛らしさ、そして、舞台終盤で一気にみせられる、実に妖艶なカルメン!

再演…は、たぶんないんだろうけれど、できるものならもう一度観たい。
ちなみに同じく超一人芝居で「マクベス」もあったのだが、うっかりダブルブッキングしてしまったせいで、そちらは見逃してしまった。聞くところによると、予言が成就するごとに墨(か何か、とにかく黒い液体)を身体に塗りつけていく…という演出だったそうだ。観たかった!

JAM

ピスタチオ解散後、このシナリオのためだけに新人を集めて上演されたお芝居。
何年か後に再演されたようですが、私が観たのは初演のみ。
解散直後、というのが響いたんだと思いますが、新人に要求していいレベルを超えたシナリオ・演出でした…たぶんまだ、ピスタチオ手法にこだわりがあったんだろうなあ。

私はピスタチオをナマで観たことはなく、この時点ではビデオ(DVDじゃなかった)も未鑑賞。
一緒に観ていた友人が、「群唱の精度やパワーマイムの迫力に、ここまで歴然とした差が出るものなんだとびっくりした」と言っていたのが印象的でした。

観た後、最初の感想は、「京極みたいなシナリオ」でした。
細かい伏線や一見無関係と思えるエピソードがあちこちに無数にちりばめられ、それが最後に一気に収束へ向かう。あのカタルシスは、一度味わったら忘れられるものじゃないと思います。

ストーリー…を書くのもなんだか野暮な感じがするんですが、一応、「とある数式を解明することによって不老不死となった男が、自分以外の生命が死に絶えていく地球で、滅びる種族のために鎮魂歌を歌うロボットを作る」…という感じ…かなあ…

役者の演技が多少マズかろうがかもうがトチろうが、気合と筋書きで泣かせるぜ!というパワーに満ち溢れた作品でした。オリジナルシナリオで一番泣いたのは、このお芝居です。


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百shebeem@infoseek.jp