実際に劇場へ足を運んだもの。
98年から数年間、友人に誘われて「演劇集団キャラメルボックス」の芝居を、ほぼ毎回観に行っていた。…ここで本数稼いだなー…今公式サイトへ行って数えたら、つごう三十本は劇場で見ていた。
正直、後半はかなり苦痛を覚えつつ観たのだが、それでもたまに「その瞬間一番弱い部分」をついてくるシナリオがあったりしたので、真面目に通っていた。
終盤になると、劇団がどうではなくて、「あの役者さんが好きだから」が動機になっていたので、やっぱりしんどかったのだろう。(ちなみにその役者さん(大内厚雄)が辞めちゃったのが、多分一番大きなキャラメル離れの理由…って書いて今調べたら辞めてなかったよ…!(笑)何この嘘情報。てか誰に聞いたんだこれ。)
今観たい?と言われれば迷わず「NO」だが、このとき観たたくさんのお芝居は、やっぱり私にとってそのとき必要なものだったのだろうと思う。
そして、それを必要とする人は恒常的にいる、という事実、それが、この劇団の、嘘みたいな観客動員数につながっているんだろう。
タイミングよく心にざっくりささっちゃった一本。
ちょうど転職だか就職だか、とにかく仕事やら進路やらについて死ぬほど悩んでいた時期に、まさにその「進路!」についてのお芝居で、一緒に見に行った友人たちの反応はいまひとつだったんですが、私は本当に、びっくりするくらい泣きました。
要するに、観客の多くがキャラメルに求めるのは「コレ」なんだろう。
なぐさめてはげまして、「大丈夫、がんばれ!」って背中を押してもらう。
思い返してみてもそんな大層な筋書きじゃなかったし、派手な演技があったわけでもないのだけれど、それでもこれだけはどうしても忘れられない一本だ。…とか言いながら「エトランゼ」といつもごっちゃになるんだけど。(多分、痛いところをつかれたからあんまり思い出したくないせいだろう…)
ザ・キャラメル節。ちなみに観たのは再演版。
初演から反響が大きく、再演を望む声が非常に多かったらしいのだが、脚本家がえらくこのシナリオに執着したようで、「初演ヒロインを超える女優がいない」という理由で長らくお蔵入りになっていたそうだ。…ふーん。(初演時の女優が引退していたのですよ。)
まあ確かに、下手な人にやらせたらえっらいイヤミな女の子…なんだけど、この作品に限ったことかね?というのが正直なところ。
ぶっちゃけキャラメルボックスのお芝居のヒロインを好きになれたためしはない。
シナリオが悪いのか女優が好みじゃないのか、多分私にとっては両方「相性が悪い」んだろうな。
って文句書いてるけどお前どーなのよ?と言われたら、すみません泣きました。
うんごめんね、たぶん、「どこよりもリサーチして商業的成功を狙い、そして毎回勝負に勝っている」にもかかわらず、「ボクたち夢ばかり追いかけてるんだ★」な態度を取ってるのが気に食わないんだと思うんだよ。…その態度すらも、商業的成功のためのものであるとわかっていても。
大内さんの魅力に目覚めた一本。
引退していた女優が、娘が芝居を始めたのをきっかけに再び舞台に戻り…みたいな話だったと思う。多分。
私がどうしてこの作品で大内さんにがつんと落ちたかって言うと、「恋に落ちる瞬間」を見せてくれたから。
いやもう見事だった、「今!今惚れた!」っていうのがくっきりきっぱりわかった。
またその後が可愛くて…今で言う「ツンデレ」。いやほんと可愛かった。
これが初キャラメルだった。
本当に偶然なのだが、初キャラメルにたまたま上川隆也が出ていた。今思えば実に幸運。
芝居慣れしていない状態(その前に観た舞台は四季の「CATS」だけ)で二階席だったので、なんだか上の空で観ていた記憶がある。
あーすごいセット…あ、上川隆也だ。…うわーあの人、あのトシで小学生か…とかなんとか。
初舞台ならばもっと何か感想があってもよさそうなのだが、生憎ストーリーはきれいさっぱり忘れているし、観たときに何かに感激した記憶もない。
なんとも象徴的な初キャラメルだった。
山本周五郎「失蝶記」翻案。私が観たのは初演。(2005年に再演されているが、キャストは変えなかった様子。うん、正解だな)
これは珍しく、パンフに「これが元ネタです」と書いてあったので覚えている。他にもこの劇団は色々な作家の作品の翻案モノをやっているのだが、ポスターやパンフのようなわかりやすい場所でその旨を書いていなかった。…ので、余計に印象に残っている。
同劇団初の悲劇!というのが当時の謳い文句で、実際この公演にはかなり力を入れていた様子。何せ、数年に一度しか舞台に立たない上川隆也のひさびさの出演作で、しかもそれが物語の最重要人物だったのだから、気合の入れようがわかろうというもの。
ちなみにこれ、原作と舞台とではかなり色合いが違っている。
原作は、「思想の違いによって引き裂かれる仲間の姿」が重点的に描かれ、実際主人公も、そのことをはっきりと言葉にして嘆いている。
翻って舞台はと言うと、思想ではなく、「友情のすれ違い」が鍵だ。
不幸な事故、当人に責任のない不運な出来事のせいですれ違い、離れていってしまう仲間たち。
原作と比べると、ずいぶんと甘ったるい仕上がりになっている。
が、その甘ったるさが、キャラメルボックスのファン層にぴったり来たのだろう。私が観に行ったのは楽日だったが、スタンディングオベーションが起こった。あの劇団のお芝居はずっと楽を観に行っていたのだが、はじめてのスタンディングオベーションだったことからも、そのウケっぷりがわかる。(ついでに書いておくと、芝居でスタンディングオベーションを見たのも、あれが最初で最後。)
こう書くとまるで私が感動しなかったようだが、実際には私も大号泣したし、思い切り立ち上がってしつこくしつこく拍手しまくった。
いまいち素直に賞賛する気になれないのは、やっぱり、「だって元ネタ山本周五郎だもんね」という気持ちがあるからだろう。
余談だが、このときの上川隆也の芝居でぞっとしたのが、「沓脱ぎ石に絶対に上がらない」というもの。
役どころがちょうど、「仲間内では問題にされていないが、ほかの仲間たちより一段下」なのだ。
私は友人に言われて気付いたのだが、教えてくれた友人によると、これは演出家の指示ではなかったそうだ。すごい。
フィリップ・K・ディックの「ペイチェック」翻案。私が観たのは初演ではなく再演。
ひとつだけ言いたい、どーしてこの劇団は元ネタをはっきりきっぱりポスターやパンフに書かないんだ!私が知ってるだけでも二人、「翻案であることを明記していなかった」ことに大きなショックを受けたことのある友人がいる。著作権の絡みだかインスパイヤだかオマージュだか知らんが、あれだけは許しがたいものがある。
…というのはさておき。
あそこではじめて田嶋ミラノさんをみて、そしてそれが最後になった。
ディックの原作は未読だが、同劇団の他作品を見る限り、これも、「キャラメルボックス大好きな観客向け」に、よくできた翻案なのだと思う。
特定の年間のキャラメルの舞台は、全部観ている。何でかと言うと、そのとき普通にお金を持っていて、かつ時間にかなり融通のきく仕事をしていたからだ。
なんだが、まったく覚えていないのもあるので、そういうのはパスして、観たことはかろうじて覚えているものだけピックアップ。