私という病、が面白くて一部買い集めてみたものの、やはり方向性がちょっと違うな、中村うさぎは。微妙なズレだとは思うんだけど、「私という病」以外は特別楽しいこともありませんでした。
で、今回のこれは、過去に女性がかかわった(被害者・加害者として)事件に関する…なんだろう、エッセイ?
「妄想です」とまえがきにあるんだけど、事件の事実関係を追及するのではなく、集めた情報から当時の彼女らの心情を想像して書いた「おはなし」というのが多分、一番近い表現になると思います。
彼女になりきって当時の気持ちをツラツラと書いてる、という感じでしょうか。表現手法は元ラノベ作家らしく、漫画的なモノローグの羅列です。
何を目指したものなんだろうな。
事件のドキュメンタリーとしては当然ながら踏み込みが足りない。物語としても成立しきっていない。
と思ったんですが、これわかった!
二次創作だ。
.設定を借りてきてモノローグをずらずら。まさにやおい。
しかしこういうやおいは自費出版だから許されるものなのではなかろうか。天下の新潮がこんなん出して良いの?事件関係者は怒らないの?
それとも、ハナもひっかけられてないだけなんでしょうか。(2008/9/29)
なんと言うか読んでると妙にほっとします。
考えを押しつけてくるとかそういうグイグイ系ではなく、身に起こったことを自虐的にでも自慢げに描くでもなく、淡々と思ったこと感じたことを綴っている、という空気。
「さうですか」で終わるむきもありましょうが、この人と感性の方向性が近ければ楽しめると思います。
ちなみにメインテーマは、めちゃくちゃザッパに言うと、
「綺麗な顔」
「好きな顔」
の違いについて。
造形美と性的魅力を感じる造作の違い、とでも申しましょうか。
後半で人気のある女性タレントに関する考察をしているのですが、これが面白い。漠然と感じていることを言葉にしてくれる人、というのに人はハマるのだなあと感じた次第です。(2008/9/29)
もうすぐ終わりか…文庫が年一度のペースで出ているので、あと三年で完結。…なのかな?
だんだん惰性購入になってまいりました。なにぶんにもナナミタンがいまいち楽しくなさそうなのがな…。と言いながら最後まで読むんだろうけどさ。
しかしこれだけ長い物語を倦むことなく書ききったことはすばらしいと思う。(2008/9/24)
斎藤美奈子が絶賛してて(文庫の解説も担当)どんなんじゃい、と買ってみて、一気に読了。久し振りにものすごく気持ちよい物語にふれました!あ、あと質の良い小説、にも。
読み始めは、ありがちな思春期子供群像劇かなーと思いきや、小さな出来事の積み重ねから物語が加速していき、一気にクライマックスへ。
登場人物がどれも生々しく、かと言って泥臭いだけでもない一面を見せてくれます。
あーそうそう、中学生のときってこんなだった!
かなりたくさんの人間が出てくるんだけど、全員しっかり肉付けされているので混乱がありません。これすごい。ダラダラと記号キャラが出てくるラノベとは一線を画してるのはここだな。
それにしてもタイトル!タイトルどうにかならんのか!
前の「不倫(レンタル)」と言い、この人はタイトルでおおいに損をしていると思う。あと装丁も。
超スイーツ(笑)っぽいんだもん…。もったいねぇ。(2008/9/22)
ヤリマンとヤリチンだと圧倒的にボロッカスに言われるのは前者、なのは一体何故だ。
…という疑問にスカッと答えてくれる素敵な一冊でした。
タイトルだけ見てるとカタくて頭でっかちなオッサンが書いたわけのわからん本かと思いますが、表紙が内田春菊なだけあって(って言って良いかはちょっとわからんけど)、中身は非常に柔軟。
援交考察とか、ほんと村上龍に爪の垢煎じて飲ませてやりたいです。
日本における処女の価値の変遷、欧州における女の評価の歴史的変遷等々、なるほどそうかと目からうろこが落ちました。偏っていると感じる部分も少なからずあったので、鵜呑みにするつもりはもちろんありませんが、男性の書くジェンダー・セックス論でここまで楽しく読める本というのは他にないと思います。(2008/9/16)
ホストとの恋愛を綴った一冊。
岩井志麻子との交流の様子が面白いです。意外な関係だな…。
どうでもいいけどこの人らは何か、内田春菊とは仲良くならなそうな気がする。勝手に思うだけだけど。
終わってから書いてる恋愛なだけあって、色々冷静で興味深い。
自分がなぜこの行為に快感を覚えるのかっていう考察は、身を切ることだもんな。
多少甘ったるくはあるものの、これもまた良し。
…しかし、後書きで驚いた。えっらいことになったんだなあ…。
あー、ホスト遊びだけは絶対しないわ。興味もないけど。(2008/9/16)
雑誌に連載されてたエッセイ集。
文庫本にして3P程度の短いエッセイが一本分。どうやらこれは単行本化されたうちの二冊目くらいに当たるようです。
ちょうど買い物依存が終わりホスト遊びにハマった頃だとかで、ウキウキした様子が描かれておりますな。……どうでもいいけどこの人、ゴクドーくんの人だったのか…タイトル知ってるよ。タイトルだけだけど。
でもすげぇ。あんだけバカほど出てるラノベでタイトル知ってるだけでもすげぇ。
雑誌の短いエッセイってことで、先に読んだ「私という病」と比べるとかなりライト。おまけに惚気満載だから読んで疲れなくもない。
やっぱり恋愛てのはズッポリ最中の人より、終了させた人の描くものの方が面白いな、としみじみ感じた次第。(2008/9/16)
何故か斎藤綾子と混同してました、すみません。
ぜんっぜん興味なかったんですが、斎藤美奈子がおもしろいって言ってるので購入。やっぱり書評本は大事だ。
不倫なんてタイトルついててしかもそれに「レンタル」とかいうルビが振ってて、これはあれか、スイーツ(笑)な人が「奥さんからあなたを借りてるだけなんだもんイヤンアハン」とか悶えて結局ポイ捨てされる話か、と思ったら全然違いました。ごめんなめてた。面白かったです。
描写がいちいち楽しくてヒザを打ちまくりました。気分いいなー!
著者の処女三部作とやらの最終巻らしいので、一、二部も読んでみようと思います。(2008/9/16)
友人からすすめられていた中村うさぎですが、買い物依存とかホスト狂いとか、なんと言うか一番私が縁遠い場所にいる人のように思えて何となく食指が動きませんでした。
んが。
本屋で平積みにされているのを見て、そういや友が勧めてくれてたっけと手にとってみたらこれが面白い。
デリヘル嬢体験記、とか書いてるけど、今までに読んだ中で一番のフェミニズムの本です。
男は皆これで勉強、…まあしてもムダっぽいけどな。
「女ってのは社会的価値が上がると反比例して市場価値が下がる」
っていうのはずーっと気になってた命題で、世のフェミニストたちはそれを男性のせいだと断ずることが多い。男性が、社会的価値の高い女性の素晴らしさを、嫉妬から認めようとしない、とかね。
でもなんかそれって違う気がする、とずーっと思ってたのが、ここで答えが出た気がする。
フェミニストが提示する答えは、「くだらない市場価値とやらから解放されましょう」なんだけどさ。
市場価値ってのは要するに、「男にモテるかどうか」。
解放されたい人はされたら良いと思う。
Aセクシャルの人もいるわけだし、ヘテロじゃなかったら男からのモテっつーのはまったく関係ない。
じゃあ、社会的価値が高いけどモテたくもある人はどうすりゃいいの?
会社にいる間は社会的価値でやってけるけど、市場価値が低いと日常、プライベートが充実しなくならない?
あと、どう頑張ったって世間で評価されるのは、社会的価値が高い女じゃなく市場価値の高い女だってのもある。(女なら子供を産んで育てて一人前、ってのはそういうことだと思う)
あと、市場価値に拘泥する女は下等、っぽい空気も、なんかやだった。
確かに私はセクハラを働く男は死滅すればいいと思うけど、じゃあ男全員が嫌いかって言うとそんなことはまったくない。男前になら私だってモテたい。
……とまあ、こういう状況に対する非常にすっきりとする説明を、この本はしてくれたと思う。
一番良いと思ったのが、決めつけてないところかな。
女性全員がこうであるとか、女性は皆かくあらねばならぬとか、そういう発言は一切ない。
性にまつわることを書いているのに、露悪的でも得意げでもないのも良い。
もー、すっごいスッキリした!
安野モヨコも好き、斉藤美奈子も好き、でもなんか帯に短したすきに長しなんだよー!
っていうのがすぱっと解消されました。
すすめてくれた友に感謝です。(2008/9/12)
実家から借りて帰ってみました、GWぶりの伊坂幸多郎。
複数の登場人物たちに順番にスポットを当てて各人の動きを追っていくというスタイル。物語が進むと彼らが様々な場所ですれ違い、その関わりが各人に影響を与えていきます。
うまい!
の一言。
そこに感動はあるか?と言われたら微妙かも知れませんが、踏み込みすぎない程良い距離感で彼らそれぞれの人生に希望の光が見えるラストが、読後感を非常に良いものにしてくれています。
あとは、それぞれのエピソードが短いので、ぶつ切りで読んでも楽しめます。
続けざまに読んでいたら飽きていたのかな、とも思わなくはありませんが、さらりと読めて仕上がりも良し、良作だと思います。(2008/8/21)
GW帰省中につきヒマでたまらぬ私に妹が貸してくれた一冊。映画化されるそうですね、知りませんでした。しかし金城たしけではないだろう、これは…私のイメージは若かりし日のトヨエツです。
それはさておき短編集。
心憎い仕上がりです。
各話最大のクライマックスは読み手に任せる形式なのですが、それが嫌味でも不自然でもないのは主人公のキャラ付けのおかげ。
ついでに最終話で「おお!」というどんでん返しもあって、扱っているテーマが重いのに読後感は非常に爽やかです。
これ、どうやって映画にするのかなあ…多分あのあたりの話を一話だけ抜き取って映像化してるんだろうなあと思うのですが、これは全話通して読んでこそ良さがわかると思います。
手軽に読めるしおすすめ。
伊坂幸太郎、ちょっと手を出してみようかなあ。
大学受験に失敗して自殺した浪人生が死後の世界で自殺者の救助を命じられて云々、というお話。
もっとお涙ちょうだい方式なのかと思いきや、テーマは意外にも「うつ病との戦い方」でした。
まあ突発的な自殺もうつ病によるものだって診断が下ったりするからなあ…こういうものなのか。
色んな死に方があるのかと思っていたら大半がうつの人々で、読んでいて飽きがくると言えば飽きがくる展開。
しかしながら登場人物全員にきちんと救いがあるのでカタルシスは十分。読後感は良かったです。(2008/5/1)
黄泉がえりの人かー。うむ、読んだことはないけど納得の仕上がり。
…今あらすじを書こうとして、主人公の境遇が思い出せないことに気づいてちょっと愕然としました。あれー?
妻が死んで何かのショックで他人の背後霊が見えるようになった主人公が探偵を始めるが、思いも寄らない大きな陰謀に巻き込まれてどうのこうの、みたいな話です。確か。
大きな風呂敷を広げた割にたたみ方がお粗末、ついでにオチもいまひとつスッキリしない、全体的に説明不足な上登場人物が皆ご都合主義で動くので楽しみがありません。出て来ている人々は盛り上がっているのに読み手は妙にしらけているという悲しい状況。
ちなみにこの本で一番面白いのはあとがきです。柴田よしき。同人かっつーの。ついでに紙面はお前の日記帳じゃねーよ。(2008/5/1)
これも妹からのレンタル品。
さっくり言うと、最後にです。
悲しいかなそれ以上でもそれ以下でもない。
というわけで感想はなし。
ラストの書き込みは不足気味かなあ。(2008/5/1)
ぶつ切り細切れの場面をこれでもかと見せてオチまで引っ張っていく手法。
これに出て来る探偵はもしかして他のシリーズの主役だったりするのかなあ。
オチとネタはそこそこ早めの段階でわかりますが、ひねりがちゃんとあって割と楽しめました。
が、パンチはいまひとつかな。やっぱり死神の精度の方が色々完成度が高かったです。(2008/5/6)
サッカーの話だと思っていたら違って、さらにプロジェクトXみたいな「皆で困難を克服するぜ!」って話かと思ったらそれも違って、良い意味で裏切られました。いや、出だしでね。
何と言うか漫画チックな話でした。キャラが特に。
これも映画化にあたってキャラが性転換させられたそうですが、やっぱり田口が女の人になったのかな。どうなんだろう。
話はそこそこまあまあ。
一番気になったのは、この人の日本語の不自由さ。
いちいち指摘するのも面倒だからあげませんが、外来語の意味を取り違えていたり日本語の使い方が変だったり、けっこうひっかかる部分が多かったです。
…いや、プロットが面白けりゃそれで良かろうって話なんでしょうけど、そういうつまらんとこで引っかかっちゃうと楽しめないのでおじゃるよ。
でもキャラは確かにうまい。キャラ小説として楽しめば良いのかも。
あと、日本語については主人公の一人称だから、主人公の日本語がちょっと不自由なんだと割り切るか。(2008/5/6)
フェミニズムが叫びまくられているこのご時世にまだいたのかこんなヒト、と言うか、まだこんな阿呆なことが言える神経が凄いと言うか、そういうおじいちゃんの戯言本です。
面白いことが書いてあんのかも知れんが、どれもこれも豆知識の域を出ない。考察、というものがおっそろしいくらいに欠如した本。
「読むとなぜ我々がペットを食べないのかという理由がわかる」とか書いてたけどわかんなかったんだぜ!
目新しい単語がたくさん出てくるので、それを目当てに読むならば良いかも。(2008/2/22)
長いこと気になっていたものをようやく購入。
うーん、向かない。
ちょっと感覚的にすぎるなあ…それともこれは訳が悪いのか。
すっごい偏見なんだがフランス語の翻訳ってどれもこれも鼻につく、へんに気取った気障ったらしいのが多い気がする。
それともフランスの文学者にそういうのが多いだけなのか。(2008/2/20)
「最近恋愛モノに飢えてる」という友とは真逆に、最近人殺し関係に興味つんつんなわたくしです。写真集とか買っちゃったんだぜ。買ったはいいけどべろ噛んだら死ぬとかいきなりうそっこ満載で読む気失せたんだぜ。肝心の写真も解像度が低すぎて荒いし。
それはさておき、こっちは非常に真面目な本です。
戦場に行ったときに人を殺せる人間ってのはどうやって作るのかとか、実際戦争で人を殺したときにどういう反応が出るのかとか。
各種考察やさまざまな心理学関係の書物からの引用もさりながら、圧巻はやはり実際に人を殺した人々からの聞き取りです。これは読んで良かった。
さて関係ありませんがこれで知りました、エーリッヒ・ハートマン。第二次大戦で351機を墜とした撃墜王だそうです。
絢爛舞踏の条件、「撃墜数300」の根拠はこれか。(2008/2/20)
面白かった!
犬の行動あれこれについての本。
犬と狼の関係、犬がどうして家畜になっていったかという歴史的背景、生物学的見地からの考察、さらにそれに由来する犬の行動パターンとそれへの対処法。
実際に犬を飼っている人には即実践で使えそうな、そして犬を飼う予定もない人にとっては娯楽になる情報満載です。
しかし一番楽しいのは、冷静に色んな犬について語るぜ!というスタンスを貫いているくせに、やっぱり何か、自分が飼ってる犬種について割かれているページが多いってところです。
何だよう、好きなんじゃねぇか、ニヤニヤ。(2008/2/12)
「死体は語る」を何年か前に読んだのですが最近ちょっとまた死体に興味がわいてきたのでひさびさ購入。うーん、死体は語るの方が面白かったな…。
今回のこれは、「日常にひそむ意外な危険、こんなことで人は死んじゃいます!」という注意書き集。
実際の事件について背景も含めて書かれていた前述の本とは趣も違うし濃さも違います。
豆知識レベル…ですらないかな。
舌を噛んでも死なないよ、とか、そろそろ世間に浸透してきている知識が並んでいます。
ま、こんなもんでしょう。(2008/2/12)
これの分野は何なのだー。
生物学の人みたいだけどなんか認識がどうとか哲学っぽい…と思ってたら岩波の哲学関係のレーベルだった。納得。
何か所か非常に興味深い、そして面白い記述や比喩があるんだけど、いかんせん読みづらい。
この致命的な読みづらさ、どうにかならぬものか…。
「ア・プリオリ」とか「オートポイエティック」とか。
とにかくカタカナが多い。
外国語に日常的に接し、特に専門用語としてそれを使ってる人にとっては、訳語よりも原語をベタのカタカナ書きにしただけの方がその単語の指すものを的確に想起できるというのはわかるんだけど、他人に、それも門外漢に説明する際にそのまま持ってくると言うのは怠慢以外の何ものでもないと思う。
同じ研究をしてる人々の間でそれを使うのは良いけど、あくまでそれはお仲間の間だけで通じる言葉なんだってことは理解していただきたい。わざとやってるなら知らないけど。
このあたり、オタクというのはどんな分野であっても排他的なのだなと思った。
内容はわりと面白かったです。ただ、彼の述べている意見が面白かったのではなく、そこに羅列された未知の事象が面白かっただけ。
人におすすめはしない。(2008/2/7)