読書感想文3

「華麗なる一族」(山崎豊子)

GW中に撮りだめてあったのを観るつもりが見逃してしまったので、実家にあった原作に手を出してみました。
白い巨塔と言い今回と言い、山崎豊子は大儲けなんでしょうか。
相変わらず古いな〜というのが第一印象。ちなみにこの相変わらずは白い巨塔にかかります。手を出したけど途中で挫折したのは、一にも二にもこの古さでした。
あと今回つらかったのが、専門用語の説明の長さ。用語説明と言うか、事業がどうなったこうなったのという部分はきれいにすっとばして物語に関係のありそうな部分だけを読みました。

ついでに告白しておくと、ラストから読むという邪道をとりました。いや、ドラマもそのシーンからはじまるって言うし…(一応ネタバレなので伏せ。鉄平が自殺して以降だけを先に読んだ)

感想らしい感想は特になし。
波瀾万丈で大変だね、あとドラマにしたら確かに絵にはなりそうだね、といったところ。
山崎豊子はどうしてこうも無味乾燥に感じられるんだろうなあ。(2007/5/7)

「薔薇の名前」(ウンベルト・エーコ)

珍しく苦戦した作品。
私はわりと本を読むときは一気に行くクチなので、手元にありさえすれば大作でも一息に読み終えてしまうのですが、これだけはどうしても無理でした。何せ薀蓄が多すぎる…薀蓄と言うか、うーん、何だろうこれ。
キリスト教だの哲学だの、そういう素養がないとわりと読み進めるのが難しいように思います。ないよそんな素養!というわけで苦戦しまくりでした。

途中であきらめてそういう部分は大半読み飛ばしました、が、それでも十二分に楽しめました。
舞台設定やらなにやらが「修道士カドフェル」を髣髴とさせて懐かしい気持ちに。これいいなあ、シリーズもので読みたいなーとか無茶なことを考えました。(2007/3/11)

「下流社会」(三浦展)

これも友人からすすめてもらった一冊。
各種データについてはざっと流し読みだったんですが、色んなところから資料を引っ張ってきているのが楽しかったです。まさかこんなところで「ドラゴン桜」なんてタイトルを見ることになるとは思わなかった…。

身近にいあるあの人この人はここにあてはまるわねウフフと思うもよし、あ、自分はここだ…と微妙にヘコむもよし。
いろんな楽しみ方ができると思います。これは再読だな。(2007/3/11)

「少子」(酒井順子)

酒井順子と言えば「負け犬の遠吠え」だが、それが話題になるより少し前に友人からすすめてもらっていた一冊。
「負け犬」やその他諸々、いくつか酒井順子の本は手に取って少しだけ読んでみたのだが、どうにも水が合わず長らく敬遠していた。が、先日ふらりと出先で立ち寄った書店で文庫落ちしているこれを見つけたところ、こちらはぴったり来た。年齢だろうか。

読んでみれば「うん、だから何?」な内容なのだが、これが十年近く前に書かれたということを考えると、やはり評価すべきなのだろうと思う。

ひとつひっかかるのが、根拠となる数字の少なさ。何かひとつの論を述べるために準備してあるデータが、圧倒的に少ない。
なものだから、「あんたそれ妄想なんじゃない?」という意地悪な見方もできなくはない。
感覚、感情では非常に「うんうん」なんだが、そんなことは誰しもが思っていることであって……
ま、それをずばっと「言っちゃった」ところが、この本の値打ち、なんだろうな。それも十年近く前に。(2007/2/7)

「ことばと文化」(鈴木孝夫)

学生のときにこの人の本は全部読んだ気がしたんだけどなー、と思いつつ、記憶にないような気がしたので購入したのですが、どうやらこれは落としていたようです。

ことばの分野って、どうしても目新しいほうへ気がひかれるものだと思うのですが、(ワカモノコトバと言われるものや、平板アクセント、極端な略語等々)それよりも、言葉というのが人間にとってどういうものなのか?という方向で書かれた本の方が楽しいなあと私は感じます。

あ、そうそう、学生の頃からずっと考えて首を捻っていた「人称の反射」という現象の原理・法則について非常にわかりやすくすっきりとまとめられていたので、胸のつかえが下りました。そうか、こういうふうになってたんだ…!あーすっきり。(2007/1/25)

「くっすん大黒」(町田康)

読もう読もうと何年も前から思っていたのに、何でか今の今まで手を出さずにいた一冊。文春文庫のコーナーって、目的がないと立ち寄らないせいだな…

キャラ小説じゃない小説っていうのが、一番キャラ立した人物持って来るなー、というのが一番強く感じたこと。
いいトシした男ふたりがぐだぐだしていて、もうそれだけですっごく楽しい!

リズムがむたくた良い文体、しかも短編集なのでするするっと読めました。他にも手を出してみようかな。(2007/1/25)

「半落ち」(横山秀夫)

映画にもなったのに超今更。 映画は観ていないんですが、「原作のあの深い描写がまるっとなくなって浅くて安っぽい!」という原作派(出た)の非難囂々で敬遠していた作品です。
原作派(…)が大騒ぎする作品て、なんかな…なんて言うかな…まあとにかく微妙な気持ちになるのです。
これも、多分となりに「照柿」が並んでて、「そうねえ警察モノもひさしぶりにいいかもね」という気分にならなければ、読まなかったと思います。

で、読んで、ああなるほど、原作のコレを期待していたのなら、どんな映画でも満足はできなかったろうなー、と思いました。そもそも、文庫350Pをかけて語られる物語を二時間におさめるのはどうやったって無理。大半が心理描写ならなおさら。
ちょうど照柿を上であげたので高村作品を例にとると、構成が「レディ・ジョーカー」と同じなのです。一つの事件にかかわるさまざまな立場の人間にスポットを当てて語り手にし、少しずつお話が進んでいく、という形式。
「レディ・ジョーカー」との違いは、語り手が交代する理由が、ドラマの進行と不可分であるという点。非常に明快かつ理屈にあっているので、置いてけぼりを食らうことがありません。

で、感想は。
うん、とっても面白かったです。正直泣きました。

ネットでちらほら聞くあらすじから想像していたのと、まったく違うお話でした。まさかこういうラストとは…と言うか、初手から「えええ!?」とびっくりさせられたんですけど。

<ネタバレ反転>読み始めて、これは取調べモノで、ははぁ、取調官と犯人との心理戦の話かー、と思いきや、警察での場面はあっけなく「半落ち」で終わり。じゃあ検察が、と思ったら、こっちもそれ以上の発展はなし。じゃあじゃあ法廷がメインで、このさえない弁護士が…と思ったら、裁判官ともども追及せずあっさり刑確定。 一体どうするんだ…あ、わかった、じゃあ刑務所で刑務官に心を開くのね、と思ったらこれもナシ。 …で、あのラスト。 まさか犯罪小説で、「全員が公の身分を捨てたところですべてが明らかになる」という展開があるとは思いもしませんでした。</ネタバレ反転>

ま、現実味がねーよ!と言われたらそれで終わりなんでしょうけどね。
私は好きです、こういう「かっこいい男どものファンタジー」。
…そういや梶の誕生日に「ん?」と引っかかりを覚えたんですが、読み終えて三日後に判明しました。自分の誕生日と一緒でした。(2007/1/13)

「ぼくは勉強ができない」(山田詠美)

食わず嫌い矯正プログラムの一環、…と言うほど山田詠美が嫌いだったのではなく、なんとなく手に取る機会がなかっただけなんですが。

ぱっと見は非常に村上春樹なんですが、こっちのが断然好感度が高い。 たぶん、女がかっこよく描かれてるからだろうな。(てか、村上春樹の描く女ってどうも……全員だっちっぽいって言うか…) だからと言って作家買いするかといわれればちょい微妙、そんな感じ。

女一人称の作品だけちょっと確認がてら読んでみるかな。(2007/1/13)

「たまには、時事ネタ」(斎藤美奈子)

婦人公論連載中コラムの、2001年〜2006年の記事を単行本化したもの。
めずらしく本にもフェミにも絡まない本でした。
切り口がどう、と言うよりは、「あーたしかにそんなことあったなあ」という感じ。時事ネタだからな。
しかし、記事の中で「いずれこうなっちゃったりするんじゃないの〜」というのがばっちり当たってたりして、ちょっとぞっとする。(2007/1/13)


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百shebeem@infoseek.jp