お芝居感想文5

「ALTER BOYZ」

イケメン五人が歌って踊るよ!なライブ形式のお芝居。
お芝居…と言うか、劇中劇みたいな感覚?
やってることはライブ、MC部分が軽いお芝居、という感じです。ミュージカルのライト版と言うのか…。

五人の登場人物が、それぞれ福音書記者(プラス一)にちなんだクリスチャンとして出てきます。神の教えを広め、罪深い魂を救うために歌って踊ってます、今日はそのライブ最終日!という設定でスタート。
ちゃんと小道具で汚れた魂カウンタなんてものまで出てきて、彼らが一曲歌うごとにその数が減っていくようになっています。
ところが、途中で数がいっこうに減らなくなってしまう…

…っていやこれ、日本でやるの難しくない…?

感覚で楽しめば良いのでしょうが。…うーん。 タイミングが良いのか悪いのか、ちょうど新訳関係の本を読んだばかりだったせいで、お芝居のとっかかりでかなり引っかかりました。 嘘を嘘として、ネタとして楽しめたら良いのかも知れませんが。

あとは、どうにもかわいそうすぎる部分があったのが、何とも言えない後味の悪さに繋がりました。
不必要に不幸と言うか、不幸の見せ方があまりにもあからさま。フアンのあの展開は本当に必要だったのか?
別に悲しい展開の全てが駄目だと言うつもりはありませんが、登場人物を悲しませるだけで、それによってめざましい成長がないような不幸というのは、ちょっとなあ。お国柄?

もうひとつ。重要な罪の告白として、一人が前振りありまくりで「私は同性愛者です」って言う、…のかと思いきや、「私はカトリック!」と告白する場面がありました。もう椅子の上でガクーです。
ニュアンスも何もかも、もう絶対「ゲイです!」って言うと思ったらカトリックかよ!
て言うか、カトリックであることって、そんな深刻な悩みをもたらすものなの?それっぽいってだけで全身の毛を剃られちゃうの?
なんでカトリックの子が新教の教会のお手伝いをしてるの?
カトリックで育ち、長じて新教に傾いたというわけでもなかったようだし…。いや、まあね、観客に対する自己解放を促すメッセージはその前にあったけど、…でもなんか、大事なことをはぐらかされた気分です。

シメも何だかおざなりと言うか、それで本当に良いの?的な。
アブラハムの告白が真実だとも思えないしなあ…。
宗教にアメリカンドリームをまぜるとわけのわからんことになるんだな、というのがわかりました、とりあえず。(2009/2/14)

「Take Flight」

東京国際フォーラムCホール。座席の配置が絶妙で、前の人の頭が全く気になりませんでした。シートもゆったりだし、いい感じです。 ただ音響がいまいちかな。高音が耳に痛かったです。 どうでもいいけどあのオケは弦楽器がいなかったような気がする…。

ライト兄弟、リンドバーグ、アメリア・エアハートの三人の人生ダイジェスト版を交互に見せていくという筋書きでした。うーん、微妙。 舞台装置は面白かったし、シナリオもそれをうまく使ってはいましたが、後味がどうにもよろしくありませんでした。題材が題材なので仕方ないのですが、それにしてもあのラストは…。

役者陣はさすがに安定していて、安心して観ることができました。唯一難を言うならアメリアかな。地声とファルセットが妙な具合にまじりあっていて少し聞き苦しかったです。芝居も悪くはないんだけど台詞まわしに変なクセがあるし一人だけやけに振りが大きいしで、何となく浮いていたような気がします。…ヒロインだからいいのかな、あれで。 一番苦痛だったのが、アメリアに肩入れできないこと。あの時代に女性が表舞台に立つことの困難さは理解できますが、それでも、初の単独フライト成功後の態度、最後のフライトを決めたときの態度を見ていると応援する気にはなれませんでした。 正直ジョージとアメリアがくっついたのもよくわからなかったしな…(史実だから仕方ないと言われたらそれまでですが、もうちょっと納得できる演出が欲しかった)

まあでもこれは別に役者さんが悪いわけじゃないな。脚本の問題か。(2007/12/9)

体感季節

東京芸術劇場小ホール。中ホールは以前バンビーノを観ましたが、小ホールは本当に小さかったです。調べてみたらキャパは260。納得です。

大学生の馬鹿騒ぎと、あの年代にはよくある人間関係が展開されます。
和樹と楠人の関係や勅使河原の冗談あたりは、まさに思春期という感じ。

ストーリーはありません。十人の仲間がいたけど二人消えて八人になった。二人を消した人間だけが消えた二人のことを覚えているけれど、他は全員、誰かが消えたことにすら気づかない、というお話。
消される人間と消える人間との間に何かしらのドラマがあれば盛り上がったのだと思うのですが、それがないので消化不良感が否めません。一応消す人間と消される人間の間にはそれなりに複雑な感情が存在するようなのですが、合間に妄想シーンが入るため、実際の彼らの交流はきわめて希薄なままです。

弱者として登場したキャラクターが強者側の弱みを暴いて打ち倒すらしいのですが、その場面は中途半端に流されてしまいます。さらにそこに別の人物が譫妄状態で口を挟んでくるので場はますます混乱。

もうちょっと登場人物を絞り込んで一人一人を掘り下げたら盛り上がったんじゃないかと思うものの、人を減らすとあの大学のサークル特有のガチャガチャした空気は出せないし、なかなか悩ましいところだったのかも知れません。
とりあえず、あの設定であの主題を描くには尺が足りなかったんじゃないかなと思いました。

もうひとつ気になったのが、舞台設定の甘さ。
出だしが近未来で、「十年前」として語られているのが実は現代なんだとしたら齟齬はないんですが、普通いかにも現代風の服装の人間が出てきて十年前について語り出したら、見ている人間はリアルな十年前を想像すると思います。
が、この十年前がどう見ても現代。衣装の微妙さはおくとしても、携帯が…十年前は確かまだカラー画面ってなかったような。いや、ほんと重箱の隅なのですが。しかしながら、細部のツメの甘さがそこかしこに出ていたことを考えると、やっぱりもうちょっと何とかならなかったのかなあと思います。

キャストは、うん若いのねーという感じでした。
・舞台寄り
・テレビ系
・学生風
強いて分類するならこんな感じ。
好き俳優さんは新境地開拓でした。…と言うか、なんか彼はあれだ、冷たい人間をやるとすごくハマる気がする。
「気が済んだ?」って言われたとき胸がキュンとしました。

………って言うか見覚えあると思ったらやっぱりくんじさんだったー!!!!!ギャー!ああああ何か途中途中ですっごい見たことあるある思ってたけどやっぱりそうだった!もっとちゃんと見とけばよかったよ…!いや気になってガン見してたけど!!
改名したのかそうなのか…書いておこう、平野くんじさんは平野勲人さんと改名されました。読み方はそのまま、ひらのくんじです。
一人やたら舞台慣れして浮いてる人がいるなあと思ったら…
エイト以来か。十年ぶりくらい?ヒー。当時は甘ったるいハンサムという感じでしたが、今回はけっこうヨゴレっぽいこともしてて、でもあいかわらずスタイルは抜群でした。抜けるような空色のジャージに金のネックレスがあそこまで似合うって素晴らしい。(2007/11/21)


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百shebeem@infoseek.jp