ひさびさにオモロイ本を読みました〜!面白かった!妹に借りた、やっぱりこれも「自分じゃ絶対買わない本」だったんですが、上下巻一気に読んでしまいました。
展開はもう最高にドス暗くてどうしようもないんですが、主人公の恋愛小説家のトンチキバカっぷりが笑えるので、それで話全体の雰囲気が七割増くらいに明るくなってます。いやほんと笑えるんですよこの主人公!実際に見ないとこの面白さはわからないと思うのでここには書きませんが、ホントにもう。
話の展開はものすごく速いし、文体も軽めなのでするするっと読めます。ラストも、まあ納得と言う感じで。…ちょっとかわいそすぎるかな?
でもこの作家の別の本はちょっと読んでみたいです。(2003/05/21)
読むとヘコみます。オノレの日本語能力の低さに。(笑)これでじゅうさんさい!?とか。
純文読むとまた違うのかも知れませんが、大体最近書かれた日本の作品ならば読んでいてまるで知らない単語(専門用語や名称なんかは別として)は出てきません。が、もうちょっと時代をさかのぼった作品、大正とか昭和初期とか、あのあたりになるとそろそろ知らない言葉が出てきます。ふだん使わないどころか、書き言葉としても目にしたことのないような形容詞とか言い回しとか。
そういうのを見るたびに、悔しいもんだなあと思います。
自分の語彙にはない、でもその事象を形容するにこれ以上ふさわしいものはあるまいと思えるような的確な言葉。
そういうのを蒐集するためにもですね、色々と本を読みたいと思うわけです。(2003/9/11)
ゲイ三人(実業家、その恋人、画家、という三人)の対談集。ほぼ日刊イトイ新聞に掲載されてたものを本にまとめた、らしいです。
ゲイ三人かー、どんな世界だー、と野次馬根性丸出しで読み始めたんですが、蓋を開けてみると、独身女性向けマナー本でした。驚き。
海外旅行へ行ってブランド店で買い物をするときのマナーにはじまりデートで行く店の選び方、そこでの食事のマナー、美しい恋愛のあり方やお洒落なプレゼントのしかた。
工夫して頑張ってるなー、という恋愛話を置けば、彼らの考え方それ自体は特別珍しくもないものでした。と言うか、珍しくもないことにむしろ驚いたと言うか… 少なくともあの本に出てきていた「ジョージさん」って人の考え方は、結婚するつもりのない独身女性とほぼ同じだと思います。(独身男性については、たぶん未だに「いい年こいて家庭も持たずに一人でいるなんて半人前」と見られる風潮が強いので、あんまり生涯独身を貫くつもりでいる人はいないと思う。アンケート取ったわけじゃないけど、会社で接する男性はおしなべてそんな感じ)
そういえば、ニューハーフの人たちはガワこそ女だけど中身はゲイのモロ男だよ、という話を人から聞いたことがあるんですが、ガワが男なゲイの人ってのは中身が女性なんだろうか。
とか思っちゃう本でした。(2003/12/21)
ガイドブックで絶賛されていたのでちょっと立ち読みし、時代設定が気に入って購入。最初の二ページほどで一回けつまずくところがあるんですが、数ページ後に種明かしされるとその意味がわかって一気に楽しくなります。
自分の人生をふりかえっての手記、という体裁で書かれているせいで幾分退屈というか、予定調和というか、そのせいで先が読めてしまう部分があるのが不満といえば不満。
設定やら何やらがダメな人はダメかも。江戸川乱歩とか山田風太郎が好きな人ならたぶん楽しいと思います。(2004/7/20)
良質の短編集。ごくささいなエピソードの積み重ねで丁寧に世界を描き出していく手法に酔いました。退屈な人はきっと退屈なんだろうな。水があうかあわないか、です。梨木香歩の作品に感じていたのは、いままではちょっと鼻につくような技巧だったのですが、見方がずいぶん変わりました。(2004/8/1)
ニグレド、ルベド、と来れば賢者のプロペラ、錬金術。そうか、賢者と言えばマギではなくて錬金術なのね。
というわけで、特に感想なし。「日蝕」との関連でいろいろややこしい話があるので、日蝕読んでみるかな。出たばっかりのときにちょろっと立ち読みしてわーやっとれんと放り出したんですが。(2004/8/1)
この人貴族書かせたらうまいなー。倦怠感とか厭世的なムードとか、自堕落で怠惰で刹那的でおっそろしく頭が回る。
はじめて読んだのが「バルタザールの遍歴」であれも貴族モノだったせいかなんなのか、彼女の筆はヨーロッパ世界を描くためにあるんだろうなあなどと思ってしまいます。うむ、すばらしい。(2004/8/1)
二年か三年前に裏庭とかあのあたりを読んだときには「達者だなー」しか思わなかったんですが、最近家守を読んで妙にツボったのが効いたのかなんなのか、これも楽しめました。由来来歴を持つ古いものとかがいいのかな…うむ。ただ、これを読んでもからくりからくさを読もうという気にはなんとなくなりませんでした。このへんがラインなのかも。(2004/9/20)
おもしろかった…!
ごっついどまんなかストライクでした。ぼっけぇきょうてぇより、わたしはこっちのがいい。ぼっけぇきょうてぇってなんかちょいと坂東眞沙子テイスト入ってた気がして、おもしろいけどああふーんという感じだったんですが、これはよかったです。うまい。
夏のむしむしと息苦しい暑さ、あの空気、それからそこに入り込むひんやりと冷たい情熱、のようなものが、非常に心地よかったです。(2004/9/20)
ふむふむという感じでさっくり読めます。ただ、全体にものすごく無駄が多い印象。そのくせ中途半端と言うか…まあ悪くはない、という程度です。どうでもいいけど主人公が「うむ」って言うのがすごく気になった。なんで「うん」じゃだめだったんだろう。(2004/9/26)
自分の中にある、これは差別的感情なんだという自覚はあるんですが、自分が認めていない尊敬していないヘテロセクシャルの男性がジェンダーとかセックスについて語ってるのを読んだり聞いたりするのって耐えられない。
というわけで実を言うとものすごい飛ばし読みをしました。でも誰か読んでほしい。そんで感想聞かせてほしい。(2004/9/26)
なんでこれだけ出版社まで書いたかっていうと、読み終えたときに「あーやっぱり幻冬舎!」とひざを打ったからです。
いや、もうこれはぜひみなさん読んでください。
BLだから。
ものすごいけなげな男のせつない片思いの物語です。
思えばカリスマも氷室の片思い物語だったな。あ、カリスマもおすすめですよ。ハードカバーよりも新書版がいいです。エピソードが追加されててラストが全然違うので。(2004/9/26)
やっと読み終えました。
実話が元になってるとかで(「八つ墓村」と同じやつね)フーンと思いながら読みました。怖い、ホラー、とかではないかな。文中のどの描写よりも口絵が怖かったことをここに告白。昔から心霊写真に弱いわたくしです。
岩井志麻子作品どれをとってもそうなんですが、これは特に、人の心の闇、それが生まれる瞬間とかはぐくまれていく過程がみっちり書き込まれていて、そこんとこが恐怖を誘う仕組みになっているみたいです。
わーとかきゃーとかいう派手さはないけれど、なかなか面白かったです。
鷺沢萠著、新潮社。
短編集。 発行されている冊数は多くないので、一気に全部手に入れることだって簡単なんですが、なんとなく、ちょっとずつ読みたいなあと思ってしまう。一番読みたいときにちゃんと手にとりたい感じ。
世界と自分との間に、べつに困りはしないんだけどちょっとした距離を感じている人々、というのを描くのがうまいと思う。
別の人の本で、「熱血でとにかく深い付き合いを求めるのがホット、他人から距離をとるのがクール、やさしいけれど深追いはしない付き合いをするのはウォーム」という表現をした女子高生の話を見たことがあるんですが(大平健「やさしさの精神病理」)、それで言うところの、まさにウォームな人々。
もっと殺伐とした空気が漂ってしまいそうなのに、ほのかなうるおいを感じさせる湿度があります。感傷にひたったりもするんだけど、同時にそれをどこか冷静に観察している自分がいる、みたいな。
村上龍なんかが対極にくる感じかな?クールでドライと見せかけて、実はとんでもなくホットでウェットな人々。
ああいうのは、鷺沢萠の作品にはいない。
ミスチルの「幸せのカテゴリー」みたいな距離感…ってわかりづらいたとえだなあ。(笑)
どれがよかったとかそういうのはおいといて、今回のこの短編集で一番衝撃だったのはあとがき。
うーむ…
ほんとに何が起こるかわからないもんだなあ。
どうでもいいけど鷺沢萠の次は絶対岩井志麻子が読みたくなる。なんでだ。(2005/3/19)
あーんもうカエサルが、アウグストゥスが、ティベリウスが懐かしいよぅ。
天才って見てるだけでものっそい爽快感が味わえるから好きです。
引越し前に買った分は処分してて、買いなおそうにもけっこうな冊数になるんじゃ…と思ってたんですが、本棚よく見てみたら、すでに手元にある方が多くなってました。ちょうどカエサルの手前までを処分してた…いいタイミングだ。
塩野七生の書く歴史って、ひいきがはっきりわかるから楽しいなあと思います。「こいつキライ」とかはさすがに出ないんだけど、好きな人物描くときのノリっぷりと、そうでもない人を描くときの落ち着きっぷりの落差が、けっこうキッパリ出る。
だもんで、今回出た三冊のテンションは、わりあい低めでした。強いて言うならヴェスパシアヌスのときはちょいと楽しげだったかなー、くらい。
さて、ネルヴァが終わって、次はいよいよ五賢帝。(いやネルヴァもその一人ではあるんだけど) 楽しみです。(2005/11/28)
J文学とラノベの線引きはどこでなされているのか。
文学賞狙えるのがJ文学?最初新書じゃなくて単行本で出るのがJ文学?J文学と純文の境目はどこ?
と、のっけから疑問符飛ばしまくりですが、ひさしぶりの舞城。
舞城のどこが好きって、テーマがものすごく明快なところ。
家族の破壊と再生、それから、子供の独立。
キーになるのが必ずお父さん、ていうあたりが男性作家らしいと言えばらしいのかな?このへんは今思いついただけなんだけど、どうなんだろう。しかし、読んでると「世の中は男と女でできとるんじゃのう」としみじみします。おもしろい。
えー、そんで、感想。
表題作のクライマックス、みっつの家族がパラレルで描かれるシーンはちょっと鳥肌が立ちました。ああいう視点、ないなぁ。つか、はじめて読みました。漫画チックなんだけど、うまいことそれを文章でやったな、やったモン勝ちだな、という感じ。
どうでもいいけど毎回めっちゃ痛いシーンが出てくるけどあれは舞城的デフォなんだろうか。
そういえば、奈津川家サーガの新刊が春に出るとかいう噂を去年の冬に聞いたんだが、あれどうなったんだろう。もう出たの?次はやっぱり二郎視点なの?(2005/11/28)
ひっさびさの司馬遼。うわなんか懐かしいな。
こうやってみると、司馬遼と塩野七生ってなんか似てるかも。スタンスが。
さておき、来年の大河でかみかみが主役を張るというので、その発表聞いてからこっち、ずーっと読もう読もうと思ってた作品です。でも四冊あるとついついね…一気に読みたいからもっとヒマなときに、と思って逃し逃し。
あと少しで読み終えますが、まあ、まあまあ…まあまあ…でした。
メインは山内一豊自身じゃなくその妻・千代で、千代の内助の功で一豊が出世していく…という筋書き。二人三脚で立身出世、というのがやりたかったようなんですが、主役がふたりいるせいで焦点がボヤけてしまってたように思います。なんつーか、地味。
いや、もともと山内一豊が地味なんだけどさ。
司馬遼も、ひいきの人物がわかりやすいなぁ、と思いながら読んでました。のぼりつめるまでの秀吉が大好きなんだなー。間違って中巻を二冊買ったせいで読むのをやめてしまった「関ヶ原」、あれを放置した理由も、なんと言うか、家康の描写にイマイチ魅力を感じなかったせいのような気がするし。
ま、それはおいといて、ドラマが「利家とまつ」の二番煎にならなかったらいいなー、と祈ってます。がんばれ、かみかみ。(2005/11/28)
浅田次郎。
過労死したおいちゃんが、やり残したことを片付けるためにこの世に戻ってくる、というお話。
けっこう前の新聞掲載小説で、ぼんやりと読んだことのある箇所もあったりして、微妙になつかしい気分になりました。
しかし、浅田次郎ひっさしぶりに読んだな…「蒼穹の昴」以来か。
あざとさが気になるんだけど、上手い。感動するかって言われたらそこまでじゃないんだけど、芸達者だなあと思います。
お涙ちょうだいに偏るでもなく、お笑いだけに走るでもなく、このへんのバランス感覚はさすが、という感じでした。
でもやっぱり、感動には遠いんだよなぁ。
まあ、小説で泣くようなことも最近はないんだけど。
…イカン、枯れとるな。(2005/12/20)
久し振りの岩井志麻子短編集。
この人の短編集を読んでいると、星新一を思い出します。短編集をこれだけ出して、それでこの質が保持できるというのはすごい。
一冊の中でも大きな当たり外れはないし、全体として見ても、その空気を乱すような作品がない。
岩井志麻子をはじめて読んだのはわりと遅くて、「ぼっけぇきょうてぇ」が文庫に落ちてからだったんですが、読み始めたときよりも今の方が楽しめている気がします。
登場人物の心の動きに同調できる箇所が増えたのかも。
…なんかそれも問題あるような気がしなくもないけど、年をとったということなんでしょうか。
藤沢周平。
実家から送られてきた荷物の中にひそんでいた一冊。
ナントカっていう俳優がこれの主役をやったのがものすごーく良かったから読め、との母のお言葉。(いつまでたっても名前が覚えられないんですがたしかナントカ聖陽っていう人。昔NHK朝の連続テレビ小説「ふたりっこ」で森山さんという棋士役をやってたのだけは覚えている。内田だったか内山だったかなんかそういう感じの苗字)
なんか、…ふーん…という感じでした。
悪くはないけれど、特別感動するような場面もなし。 まあでも、中高年の主婦にウケそうっていうのはわかりました。マディソン郡の橋(読んだことも映画観たこともないけど)とかああいうイメージかな。
「つらぬけ初恋!プラトニック不倫」みたいな。(後日友人から、「マディソン郡はガッツリやっちゃってるよ!」と聞きました。なんだとー!)
主眼がどこなのかが今ひとつつかみづらくて、それも中途半端な印象を強めている気がします。
読後の率直な感想は、「女って怖い」でした。
いやわたしも女なんだけど。でもこのヒロイン、怖いよ。
つーかこれに出てくる女性ほぼ全員怖かった。
五冊か六冊読んだ中で一番苦痛だったのが今回の「マラケシュ心中」だったんですが、いやー今日気づいたよすっきりした。
レズの皮をかぶったただの不倫小説だということに気づきました。ばんざい。謎はすべて解けた。
不倫→略奪婚の黄金パターンです。
また会話がスゲーんですよこれ…
「わたしを愛しすぎないで…」
「もう遅い。あなたを愛しすぎてる」
とかギャグでもなんでもなく言い合ってんの。キャー。
こういうのがお好きなのは不倫の御大渡辺某だけかと思ったけど、もうなんか、西の渡辺東の中山という感じ。双璧です。
モヤモヤの正体が知りたくて読んでましたが、謎は解けたのでもうおなかいっぱいです。(2006/5/15)
斎藤美奈子。文春文庫。
斎藤美奈子は定期的に本屋を回ってチェックしてるんですが、やっぱり今回もウフって感じでした。なんと言うかほどよい距離感が良い。
遙洋子ではちょっとうっとうしいというか息苦しいというか暑苦しいし、酒井順子はなあなあに流れすぎててアウトだなあと思うわたしには、ジャストミート。まあヌルいクチに入るってことは自覚してるんでよしとしよう。(2006/5/23)
すごいね文豪!
実を言うと読み始めたときは、(筋書きを知っていたので)「えー、こんな話にこんなページ数いるの?」と思っていました。しかし問題は筋書きじゃありませんでした。読み終えてから文豪に土下座。
もっそい生々しくてよかったです。アンナの述懐なんか、不倫主婦のブログを読んでいるかのような気分にさせられました。すげぇ。
生々しい、というのは、「味わったことのある思いを的確に表現できる」だけではなく、「大多数の人間が、実際味わったことはないけれどもおそらくこうだろうと想像している感情を知っている」ことも必要なんだろうなと、読んでて思いました。
特定の経験を持つ人だけに働きかける力を持つ物語(いわゆる大人の絵本とか、ああいうやつ)が描ける、というのもたしかにひとつの才能ですが、経験を持たない人にもそれを疑似体験させられるだけの筆力というのを持つ人もいるのだなあと。
トルストイは短めの話をいくつか読んだことはあったんですが、もうちょっとほかのも読んでみようかなあ。(2006/5/27)